2026/02/11

トランジスタミニワッターを作って見た

低ゲインパワーアンプを作って見てアンプの出力は 1W もあれば十分すぎるなと思ったのと、Takazine さんのA1015/C1815フルディスクリート ヘッドホンアンプの記事をみていて手元にある 2SA1015, 2SC1815 でもスピーカーを鳴らせるのではと試してみることにしました。

回路は以前から気になっていたトラ技Jrの記事*1を基にしています。記事では15Wですが、5Wで作られている方がいます (http://a011w.broada.jp/gpae/5wa_amp.html )。さらに目標の出力を減らす(0.5Wでればよし)ことにしました。できあがった音には満足しています。最終的な回路図は次の図です:

 

*1 黒田徹: ゼロ・ディストーション・オーディオ・アンプの製作, トラ技ジュニアNo.29, pp.6-13, CQ出版社, 2017. 

ブレッドボードで実験

最初の実験 

最初はQ1, Q3, Q5 は 2SC1815GR, Q2, Q4 は 2SA1015Y でブレッドボード上で実験するところからはじめました。R8, R9, C8, C9, C10, C11 は載せていません。R15, R16 はなくてもよかったのですが、何かの条件で発振したので途中からはいれています。

最終段が 2SC1815GR, 2SA1015Y の NPN/PNP 各1石でも 8Ω スピーカーは鳴らすことが出来るのが分かりました。最初はアイドリング電流は 20mA ぐらい、これを 100mA ぐらいにすると3次歪みが減って音が変わるのも分かりました。USB audio I/F (Scarlet 2i2 gen4)の LINE IN にスピーカー出力をいれ (電圧が高くないし、シングルエンド(BTLでない)なので直接入れても壊れない) アイドリング電流を変えながら 1kHz 入力時の出力の FFT (ソフトは Rewを使いました) を見ていると3次高調波がアイドリング電流を増やすとぐーっと下がっていきました。

ただ1石だとちょっとキツいみたいで、Q1, Q2 を2石パラレル(2SC1815x2, 2SA1015x2)にすると歪みが減るようでした。それと2SC1815, 2SA1015がいくつかあったので、Q1, Q3とQ2, Q4 のダーリントン接続の合成 hFE を揃えてみましたが FFT をみても音を聞いても違いは分かりませんでした。

NFBの有無を変えて見る

 R4が帰還抵抗で、回路図では OUT のラベルのついた出力からフィードバックをかけています(NFBあり)。これを外してオペアンプの6番端子につなぐとオペアンプでローカルフィードバックがかかり、トランジスタはエミッタフォロワで全体の帰還から外れます。音としては大きく違うというほどではないものの、FFT をみると NFB ありの方が歪みが少なく、とくに周波数-歪み特性をみると NFB がある方が歪みが一気に下がるのが分かりました。ただオペアンプはゲインが周波数ともに下がっていく(GB積一定)ので周波数が上がるにつれてTHDの改善も悪くなっている(直線上に下がる)ように見えました。

オペアンプを変えて見る

いつ変えたか憶えていないですがオペアンプは OPA1611 と OPA828 (FET入力)を試しました。たまたま手元にあったオペアンプです。結果、OPA1611 だと出力オフセットが出る(ポップノイズが出る)のと OPA828 の方が音が好みだったので OPA828 にしました。

ドライブ段と出力段トランジスタを変えて見る

Q1, Q2を手元にあったジャンクのアンプから外した 2SC4511 / 2SA1725 にかえると音に余裕が出る感じと元気な感じに変わりました。Q1, Q2 を TTC004B, TTA004B に変えると音が落ち着いた感じになり、Q3, Q4 を 2SC2240, 2SA970 に変えるとさらに上品になりました。

C10, C11を追加する

C10, C11 の意味が最初は分からなかったのですがブートストラップコンデンサのようです。C10, C11 は DC 的には GND と電源から少し下がった電圧で充電されています。出力によって C10, C11 の電圧分 R11, R12 の電圧が上下し、その分 U1 のオペアンプからの出力を軽くするようです。C10, C11 の有無で周波数-歪み特性が高域までフラットになりました。これがなかったら、元記事でゼロディストーションアンプにはなっていないと思います。

実用にする

音はよいので実用にするため基板をおこしてケースに入れて実用出来るようにしました。ゲインの方は3倍で問題なさそうだったので他の値は検討していません。R1, R2 は 0.47Ωに下げました。

基板の設計と発注

基板はKiCADで設計して JLCPCB に発注しました。アンプ部、ドライブ段・パワー段用の整流基板、オペアンプ・バイアス段用の整流・安定化基板の3枚です。 

電源の検討

しばらくはブレッドボードに組んだままCVCC電源から電源を供給していたのですが、電源ファンがうるさいので低ゲインパワーアンプの電源部を流用してしばらく使っていました。CVCC電源と比べると若干ノイズが増えるようでした。最終的な電源の候補はACアダプタ(スイッチング電源)+レールスプリッタ、ACアダプタ(スイッチング電源)x2、あるいはスイッチング電源モジュール、トランス電源を考えました。で、ACアダプタ×2は片方しか挿していないときの事故が嫌なのと意外と高価なことから、トランス電源に決めました。それと http://a011w.broada.jp/gpae/5wa_amp.html  で勧められているので、ドライブ段・パワー段とオペアンプ、バイアス段は別トランスにします。
 基板設計時に回路図を入力するのに間違ってバイアス段の電源をパワー段からとっていたのですが、それでは歪み・混変調特性が悪かったです。 

EIコアトンラスかトロイダルトランスか

ドライブ段・パワー段のトランスとしてEIコアのトランスを買って試したのですが、リーケージフラックスの影響で電源周波数と2次、3次の漏れが FFT で見ると見えるのと、小さいですが歪みが増えているようでした。ハム音が出るわけではないですが、気になったのでトロイダルトランス(シリコンハウス共立のHDB-25(6.3V))を買って変えて見るとリーケージフラックスが一気に減って、若干電源周波数と整数倍の漏れが見える以外は消えたのと音が大きく変わったので、ドライブ段・パワー段は HDB-25(6.3V) にすることにしました。

1点アースと左右独立電源

基板設計ではアンプ基板上でドライブ段・パワー段とオペアンプ、バイアス段のグラウンドをつないでいました。1点アースになっていません。1点アースの方がいいのかとパターンカットしてドライブ段・パワー段で1点アースにしてみたのですが、かえってリーケージフラックスや逆チャンネルの影響などを受けやすくなるようでした。チャンネルセパレーションもよくないようだったので、左右独立トランス・電源基板にし、基板上で二つの電源のグラウンドをつなぐことにしました。

スピーカー保護・アンプ保護

スピーカー保護・アンプ保護のために出力リレーをいれるかですがリレーはなしにしました。まず OPA828 を使っていると DC オフセットがほぼ出ないので電源オンオフ時のポップノイズは、ほぼありません。回路が壊れたときのDC漏れですが、最大で電源電圧がかかります。このときトランスの開放電圧で8Vぐらい、8Ωスピーカーなら、8Wです。手持ちの許容入力が一番小さいスピーカーが P-610MB で定格8W、最大20Wなので、ポップノイズに気づいてすぐ電源を切ればまず大丈夫だろうという判断です。アンプの保護の方は、スピーカー端子ショート時にQ1, Q2のトランジスタかR5, R6が過熱で壊れる可能性がありますが、自分で使うものなのでスピーカー端子を触った直後に音が出なかったらすぐ電源を切って点検するとしてリレーは省くことにしました。

ケースに入れて完成

タカチの YM35-6-23 (YM-350) を上下逆にして使うことにしてケースに入れて完成です。ブレッドボードで試しはじめたのが12月ぐらいで完成は今日(2/11)までかかりました。最終的な特性は手持ち機材では満足に測れないのが分かったので、面倒になって測っていませんが、音はかなりよいと思っています。ノイズはかなり小さく、スピーカーの代わりに32Ωのヘッドフォンを直接つないでも何も聞こえませんでした。ケースに入れる前の段階で REW で眺めた範囲(スピーカー端子で200mVp-pぐらいの条件)では Scarlet 2i2 単体でのループバックとアンプを通してのループバック歪み・混変調特性は変わらないぐらいのようでした(つまり測れない)。
 
正面から 
内部は写真の上からアンプ部の基板、ドライブ・パワー段の整流基板、オペアンプ・バイアス段の電源基板(トランス込み)、トロイダルトランスです:
背面から

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