32ビットDACだとデジタルボリュームでも実質ビット落ちしないから、プリアンプなしでパワーアンプを直結でいいんじゃない?という話があります。やってみると割とよいのですが、普段聞いている音量にするとデジタルボリュームが -50dB、パワーアンプで +26dB 増幅しています。それならパワーアンプで電圧増幅をしなければよいのではと思えてきます。ただ市販のパワーアンプでは見当たらないようです。
自作では電子うさぎさんが、DAC+パワーアンプの構成でパワーアンプ段の増幅率を1としたアンプを2種類作られています。回路図やガーバーデータまで公開されているので構成が簡単なUSBAudio2.0 DACの完全自作!BD34301EKV搭載の真似をして作って見ることにしました。ゲイン1倍、トランスリニアバイアス回路がアンプ部の特徴です。USB-DDC, DAC, 差動-シングルエンド変換部分は作らず、電源基板とアンプ基板のみ真似をすることにしました。
基板は電子うさぎさんのガーバーデータそのままで JLCPCB へ発注し、特に問題なく届きました。部品は手持ちにないものが多かったので秋月電子と Mouser で購入しましたが、いくつか買い忘れがあり共立エレショップ(EIコネクタ関係)と秋月電子に追加発注することになりました。
実際作って見ると24MHzぐらいで発振していました。原因はオペアンプのようで、オペアンプの入力にオシロのプローブを当てるだけで発振します。入力に何も繋がないなら大丈夫なのですが、差動-シングルエンド変換回路が基板内にある元々の設計なら問題ないのかもしれません。ゲイン1倍をあきらめてx1.2倍(1.6dB)になるようにすると発振は止まりました。
次に悩んだのが1kHzの正弦波を入れたときの高調波が多いこと(かなり高い周波数まで)です。これはGND ループを切るように入力のグラウンドを直接グランドにつながず 4.7Ω (もっと小さくてもよいかもしれない。手持ちがなかったので)を通してつぐようにしたら解決しました。https://nw-electric.way-nifty.com/blog/a1015c1815hpa.html の 2.2Ωの抵抗の質問が参考になりました。チャンネルセパレーションも悪かったのですが、この変更とスピーカーのマイナス側を電源基板から直接つなぐようにしたら、-80dB とれたのでよしとしました(右に -8.3dBFS (FS 2Vrms) 1kHzの正弦波を入れ,左側のレベルを確認, 逆向きは測ってない)。
変更の部分だけ回路図を描くと次のようになります(左チャンネル)。部品番号のあるところは既存のパターンを流用しています。1k, 20pF, 220Ωは空中配線です:
スピーカーを繋いだままで電源を入り切りするとポップ音が出るのでオリジナルと同じラッチリレーをのせてみました。駆動用のドライバ (IC17, IC18) は廃番になっていたので互換品の DIODES 製の DRDC3105F-7 にしました。リレーの駆動信号はPIC12F1822で作りました。リレー駆動用 PIC 周りの回路図です:
最終的なケースの中の様子です:
ケースがプラスチック製なのでアンプ基板の向きはオリジナルと上下逆にしてヒートシンク(NFJのTripath社TA2020-IC用アルミヒートシンク 熱伝導両面テープ付き https://www.amazon.co.jp/dp/B01MXGTNOC)をトランジスタに載せています。電源基板のトランジスタは買い忘れて少し外形が大きいの(TTA1943, TTC5200)をつけたのではみでています。
音の方は特段すごいという印象ではないですが女声ボーカルが二人ではもっているところなど分離よく聞こえると思いました。音量を上げる方ではないので発熱は少なく、普段の音量(波形が200mVpぐらい)だと6Ωのスピーカーで消費電流は 70mA いかないぐらいです。
以下、特性などです。ゲインや配線が最終のものではないときに測ったものですが出力-歪み特性は下の図のようになりました。10mW 付近で最良になっています。ただこれは測定に使った MOTU M2 の歪みを含んでいて、実際にはもう少し10mW以上でもよいはず(10mW以降の入力でM2の入力が歪む)です。
入力ショート時の左チャンネルの様子(ゲインは最終と同じ配線は最終でない):
MOTU M2 の入力が-20dBFS(スピーカー出力66mW)になるようにしたときの比較(ゲインは最終と同じ配線は最終でない)、赤:MOTU-M2のRCA-out -> XLR in (シングルエンドでのループバック), 紫:本アンプ(無負荷), 青:本アンプ(6Ω負荷):
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