D級アンプで Post Filter Feedback (略して PFFB) を構成すると歪みやノイズが減って音がよくなるという話があります。回路特許もあって採用しているメーカは少なかったらしいのですが TI の IC でアプリケーションノートに PFFB の記述があって比較的簡単に試せるというのが気になっていました。またA級, AB級アンプでも負帰還を強めにかけるとダンピングファクターが向上するので、理論上は D級アンプでも同様なので、その点でも音が変わるのではと思いました。
TI のアプリケーションノートは SLAA788A "TPA324x and TPA325x Post-Filter Feedback" (https://www.ti.com/jp/lit/an/slaa788a/slaa788a.pdf) です。回路図を見ると抵抗1本で帰還し、位相遅れの補償をコンデンサ二個と抵抗1本(+TPA32xxの内部抵抗) でするようです(読み間違っていなければ)。
アンプを自作するところから始めるのも大変だなと思ったので有名どころの Aiyima A07とTPA3251 搭載の無名のアンプ(https://www.aliexpress.com/item/1005006069855189.html) を買ってみました。買った時点で TPA3251 搭載のアンプの方が音がよかったのと、ケースもなく改造しやすいのでこちらを改造してみることにしました。フィードバック回路を追加するのに加えて、TPA3251の手前に入っているカップリングコンデンサ (電解コンデンサ 10uF) をカップリングコンデンサ+抵抗(2.7kΩ, アプリケーションノートの値)に変更する必要があります。あと入力のオペアンプで LPF を構成するようになっていたので、それ用のコンデンサを追加します。
そこでオペアンプに追加するコンデンサは基板裏で追加し、カップリングコンデンサを外し、カップリングコンデンサ+抵抗とフィードバック回路を載せた基板を作ることにしました。JLCPCBで頼むと安いですし。基板の方は KiCad でライブラリを活用してシルクと実部品の見た目との差は気にせず作ることにしました。完成した基板です:
これに部品を載せて TPA3251 アンプ基板の裏に載せます。
スチロールコンデンサが見えますが、スチロールコンデンサである必要はなく、フィルムコンデンサでいいはずです。音質にはあまり関係ないはずなので(聞こえない周波数なので)セラミックコンデンサでもいいかもしれません。
アプリケーションノートに安定性を見るために 1kHz の矩形波を入れてみました。出力に何も繋がない一番発振しやすい条件です。これぐらいなら安定している範囲だと思います。音の方はよくなったと思います。テスト用(アンプのテスト兼ベンチマーク)にかんすぴ (P1000-E + P1000K) を使っていますが、ダンピングファクターが上がったのが分かります。DS-900EX につないだときもダンピングファクターが上がった効果があると思います。
特にかんすぴですが、インピーダンスが周波数によって大きく変わるのでダンピングファクターが小さいアンプ(フルデジタルアンプやミニコンポ)だと音のバランスが悪く(周波数特性が悪く)なります。これが改善されないかなと思っていたのですが、よくなりました(アキュフェーズの P-11 とたぶん区別がつかないぐらい)。また持っている中で「情熱大陸LIVE BEST」のCDの1曲目の手拍子の音がスピーカー、アンプで結構変わる気がするのですが、よくなっていました。
ここまでストレートにうまくいったように書いていますが、実は基板のカップリングコンデンサのICへの接続順と出力のLCフィルタのICへの接続順が違うのに気づかず(回路を追わず見た目で判断してた)、発振して困りました。結局、信号を追うと入れ替わっているのが分かったので上の写真のように配線をクロスすることで解決しています。また PWM 周波数が 450kHz だったので基板上の 33kΩを 10kΩに変えて600kHzにしています。このあたり真似をする方は気をつけた方がいいかと思います。それと電源のコンデンサをニチコンのオーディオ用電解コンデンサ FW シリーズの 2200uF 50V に変えています。FW にしたのは安かったからです。
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